研修動画の制作費用はいくら？種類別・時間別・内訳別の相場を解説

研修動画は、社員教育や業務マニュアルの共有、コンプライアンス研修など、多くの企業で活用が進んでいます。動画にすることで、説明のばらつきを防ぎ、何度も繰り返し視聴できるといった利点がありますが、いざ導入を検討するとなると気になるのが「いくらかかるのか」という費用面です。

本記事では、研修動画の制作にかかる費用の目安や、価格を左右する要素、費用を抑えるための考え方などを、初めて動画制作を検討する方でもわかりやすく解説していきます。

研修動画の制作費用の相場

研修動画の費用感をつかむためには、まず全体的な相場を知っておくことが大切です。ここでは、動画の種類や内容ごとに、どの程度の制作費が発生するのかを見ていきます。

一般的な費用の目安

研修動画の制作費は、内容や構成、尺の長さ、使用する機材などによって大きく変動しますが、おおよその目安として、以下のような金額帯が挙げられます。

動画の種類	制作費用の目安	内容例
アニメーション動画	20万〜100万円程度	操作手順、マナー研修などの説明向け
実写動画（ロケ）	30万〜150万円程度	工場・店舗の撮影、インタビューなど
スタジオ収録型	40万〜120万円程度	ナレーション＋テロップ、グリーンバックを用いた構成など

研修動画の形式別の相場

研修動画には構成や演出方法によって多様なスタイルがあり、それぞれにかかる制作費用の目安も異なります。以下では、代表的な形式ごとの費用相場をご紹介します。

形式名	制作費用の目安	特徴
セミナー形式	30万〜80万円程度	会議室やセミナールームでの講義風映像。編集や撮影が比較的シンプル。
マニュアル形式	20万〜70万円程度	手順や操作方法を説明する実用的な動画。アニメやナレーションも活用される。
ドキュメンタリー形式	50万〜150万円程度	社員インタビューや現場映像を通じて、実情を深く伝える構成。撮影工程が多くなる。
クイズ形式	30万〜90万円程度	視聴者参加型で理解度チェックが可能。構成の工夫や画面演出が必要。
ドラマ形式（ストーリー仕立て）	80万〜200万円程度	実際の業務やケースを再現するストーリー型。脚本・キャスト・演出にコストがかかる。

セミナー形式

セミナー形式は、講師が登壇して講義を行う様子をそのまま撮影するスタイルです。会議室や研修室など、社内にあるスペースを利用して撮影するケースが多く、構成や編集も比較的シンプルです。スライドに合わせて話すことで内容がぶれにくく、複数日に分けて撮影しても編集で自然につなげやすいため、全体の作業時間を短縮しやすい形式です。

マニュアル形式

マニュアル形式は、操作方法や業務の手順などを視覚的に説明するために作られる実用性の高い動画です。画面録画やナレーションを使った説明に加え、アニメーションで補足することもあり、初心者にもわかりやすい内容に仕上げやすい形式です。社内システムの使い方や製品の操作方法などを反復視聴して学べるため、業務効率の向上に役立ちます。

ドキュメンタリー形式

ドキュメンタリー形式は、インタビューや現場の映像を通じて、実際の事例や現状をリアルに伝えるスタイルです。社員の声を交えることで、内容に説得力や共感性が生まれ、組織文化や職場の雰囲気を伝えるのにも効果的です。構成には綿密な計画が必要で、複数日の撮影や複数拠点での取材が必要になる場合もあるため、比較的制作費は高めになります。

クイズ形式

クイズ形式は、研修の途中や最後に設問を盛り込み、受講者の理解度をその場で確認できる形式です。映像に選択肢や回答パートを挿入することで、受け身になりがちな視聴スタイルに適度な緊張感を与え、学習効果の向上が期待されます。インタラクティブな要素を含む場合は、システム開発やプログラム連携が必要になり、制作コストが上がることもあります。

ドラマ形式（ストーリー仕立て）

ドラマ形式は、職場でのトラブルや顧客対応、コンプライアンス違反などを物語風に再現し、登場人物のやり取りを通じて学びを深める形式です。感情移入しやすく、視聴者の記憶に残りやすい点が強みですが、その分、脚本作成・役者の手配・ロケ撮影・演出など多くの工程が必要となり、他の形式に比べてコストと時間がかかる傾向があります。

尺（時間）による費用差

動画の尺（目安）	制作費の目安	備考
～5分	20万〜50万円程度	説明用、商品紹介などに適した長さ
～10分	30万〜80万円程度	簡易な研修や講義の要点をまとめた内容に対応
～30分	50万〜120万円程度	一連の研修内容を網羅できる長さ
～60分	80万〜200万円程度	複数章構成や高度な演出を含む長編研修向け

研修動画の制作費は、動画の長さ（尺）によって大きく左右されます。一般的に、長くなるほど撮影日数や編集作業が増えるため、その分コストも高くなります。

たとえば、5分程度の短い動画であれば、限られた撮影素材や簡易な構成で済むため比較的低コストで制作できますが、30分〜1時間を超える長尺の動画になると、内容の設計や構成にも時間がかかり、編集に必要な素材量や演出の工数も増加します。そのため、長くなるほど制作費が上がる傾向があります。

また、長尺の動画では章立てやシナリオの設計、視聴者の集中力を維持する工夫も求められるため、単に時間が長くなる以上に制作側の対応も複雑になります。

費用を構成する主な内訳相場

研修動画の制作費は、単に撮影するだけではなく、いくつもの工程に分かれて構成されています。それぞれの工程で必要な作業や専門性が異なり、それに応じて発生する費用も変わってきます。全体の予算を考えるうえで、どこにどの程度のコストがかかるのかを事前に把握しておくことが大切です。

項目	相場	内容の例
企画・構成	5万〜20万円程度	ヒアリング、構成案の作成、シナリオライティングなど
撮影・収録	10万〜50万円程度	カメラ、照明、スタジオ、出演者、ロケ機材など
編集・アニメーション制作	10万〜40万円程度	カット編集、テロップ、BGM、アニメーションの演出など
ナレーション・音声処理	5万〜20万円程度	ナレーター起用、多言語対応、ノイズ処理、整音など
修正・納品対応	3万〜10万円程度	修正対応、形式変換、複数データ作成など

企画・構成

この工程では、動画の方向性を明確にし、全体の設計を行います。依頼内容のヒアリングから始まり、誰に何を伝えるのかといった目的の整理や、伝え方の構成、シナリオの作成までを行います。構成や台本の質は動画全体の完成度を大きく左右するため、伝えたいことを的確に整理し、視聴者にとってわかりやすい流れを組み立てることが重要です。とくに、情報量が多い場合や抽象的なテーマを扱うときは、構成作業に十分な時間と工夫が求められます。

撮影・収録

実写映像を制作する際に必要となる工程です。撮影機材や照明、マイクなどの技術機材に加え、撮影スタッフや出演者、スタジオ・ロケ地の確保なども含まれます。撮影の規模や拘束日数、場所の制約によって費用が大きく変動します。アニメーション動画の場合、この工程は省略されることもあります。

編集・アニメーション制作

撮影した映像や素材を編集し、研修内容に合った動画に仕上げていく工程です。不要な部分をカットし、視認性の高いテロップやBGM、図解アニメーションなどを加えることで、情報がより伝わりやすくなります。アニメーション動画では、イラストやキャラクターを動かす作業が中心となり、そのぶん工数と費用も増える傾向にあります。

ナレーション・音声処理

内容を音声で補足するための工程です。プロのナレーターに依頼する場合や、外国語対応のために多言語ナレーションを入れる場合には、その分の人件費が追加されます。また、収録した音声のノイズ除去や音量調整などの整音処理も、聞きやすい動画に仕上げるためには欠かせない工程です。

修正・納品対応

動画制作後の最終段階にあたる工程で、初稿提出後の修正対応や、複数のデータ形式への変換などが行われます。納品形式（MP4、YouTube用など）の指定がある場合や、社内用・外部用に複数バージョンを作成する場合にも、対応に応じた費用がかかることがあります。修正回数や納期によっても価格に差が出るため、事前に確認しておくことが大切です。

研修動画の制作費用を安く抑える方法

研修動画は目的に応じて柔軟に作れる一方で、制作費が気になるという声も多くあります。必要な効果を得ながら、できるだけコストを抑えて制作するにはどうすればよいのでしょうか。

ここでは、予算を抑えるために検討すべきポイントをご紹介します。

目的や対象に合わせた作り方

「誰に、何を、どのように伝えるか」によって、必要な構成や演出は大きく変わります。たとえば、受講者が社内の従業員であれば、凝った演出や視覚効果を多用する必要はなく、情報が正しく伝われば十分です。ナレーション付きのスライド動画や、操作手順を画面収録した形式など、シンプルで実用的な構成で十分に目的を果たせます。

このように、必要以上の演出や撮影を避けることで、制作費を大きく抑えることができます。

撮影の有無・規模を見直す

実写撮影を行う場合、ロケ地の確保や機材、人員の手配などに多くの費用がかかります。撮影のボリュームを見直すことで、コストを抑えることができます。たとえば、ロケ地を1カ所に限定する、1日でまとめて撮影を終えるスケジュールを組むといった工夫が有効です。

また、そもそも撮影が必須でない内容（eラーニング型の座学やマニュアル解説など）であれば、アニメーションやスライド形式に置き換えることで撮影費をまるごとカットできます。

制作会社の選び方を工夫する

制作会社ごとに料金体系や対応範囲はさまざまです。大手の制作会社は、体制や品質管理の面で安心感がありますが、そのぶん人件費や管理費が制作費に上乗せされるため、費用は高くなりがちです。コストを抑えたい場合は、社内マニュアルや教育動画の実績がある中小規模の制作会社や、専門分野に強いフリーランスを選ぶのも選択肢のひとつです。

過去の制作実績やレビュー、担当者の対応力などを確認しながら、信頼できるパートナーを見極めましょう。

短尺で要点を絞る

研修動画の尺が長くなるほど、構成・撮影・編集すべての工数が増えるため、制作費も高くなります。そのため、伝えるべき情報を絞り込み、必要最低限のポイントに集中させることで、自然と動画の時間も短くなり、全体の費用を抑えることができます。短尺の動画は視聴者の集中力が続きやすく、複数回に分けて見ることで学習効果も高めやすくなります。

複数本をまとめて依頼する

研修内容が複数テーマに分かれる場合、それぞれを1本ずつ個別に発注するよりも、まとめて一括で依頼した方が費用を抑えやすくなります。スケジュールやスタッフの手配をまとめて行えるため、撮影や編集の効率が良くなり、制作会社側もコストを下げやすくなります。また、まとめて発注することで割引が適用されるケースもあるため、企画段階から必要本数を整理し、まとめて相談するのがおすすめです。

助成金や補助金を活用する

自治体や国の支援制度を活用することで、研修動画の制作費用を一部補助してもらえる可能性があります。とくに中小企業を対象とした制度には「IT導入補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などがあり、動画制作を含む教育コンテンツの費用が補助対象となる場合があります。申請には事前の手続きや書類準備が必要ですが、条件が合えば大きなコスト削減につながります。制作会社によっては申請サポートを行っているところもあるため、あわせて相談してみるとよいでしょう。

最後に

研修動画の制作費用は、内容や目的によって大きく異なります。重要なのは、どの工程にどれだけの費用がかかるのかを把握し、目的に合った構成と予算のバランスを取ることです。必ずしも高額な映像表現が成果につながるとは限りません。むしろ、受講者にとってわかりやすく、現場で活用しやすい実用性のある動画を目指すことが、研修効果を高めるポイントになります。